実例部門 最優秀賞 「玉野の別荘」 野田 大策 ARTBOX建築工房一級建築士事務所 審査員講評

人工物である建築と自然が、どのように融合できるか、それによって、人間の暮らしがどのように自然からの恵みを得て、ウェルネスやマインドフルネスを体現するライフスタイルへと進化させることができるかーーといった観点から、玉野の別荘は、自然の恵みをまるでオーケストラの演奏にように取り込み、美しい楽曲を奏でる存在に思えた。山から海へ、海から山へと自在に巡る風や光や時間を満喫できる、空と海と山に囲まれたロケーションに、内と外がつながる構造を持った家屋が佇む状況は、人間本来の暮らしの原点を感じさせる。

一般社団法人日本エシカル推進協議会(JEI) 会長 生駒芳子

最近の空間デザイン潮流のひとつにナチュラル志向、自然回帰というのがある。しかしよくよく考えてみるにヒトは本当に自然を大切にしてきたのだろうか?答えはNoである。人類は長い歴史の中で自然とたたかい自然を破壊しつつ発展を遂げてきた。その力は地球の気候を変動させるほど大きくなってしまったのだ。かといって今更大昔の生活に逆戻りはできない。どこかで折り合いをつけ、自然をリスペクトしつつ心ゆたかに生きてゆきたい。そんな想いをかなえさせてくれる作品だ。

一般社団法人日本空間デザイン協会(DSA) 名誉会長 官浪辰夫

この敷地の持っている恵まれたロケーションのなかで、内部空間と外部空間、そしてそれらをつなぐ中間領域的空間が巧みにデザインされている。その空間づくりの構想力にまず圧倒される。細部に目を移すと、人が気持ちよく集う場として、細やかな配慮が随所に見てとれる。木製サッシの大開口はこの空間のハイライトといえようが、その高さと軒の出の寸法関係も、開放感を犠牲にすることなく日差しが防げるよう、適切に工夫されている。また、ハイサイドライトの取り方も、この空間の開放感に寄与している。全体として、注文主の希望を十二分にかなえたであろう、すぐれた作品と評価できる。

日本インテリア学会(JASIS) 名誉会長 直井英雄

海と山という自然の中のその境界を敷地として、設定され、その敷地の状況に応じたプランニングにて、海側の道路からの車のアクセス、そこからの半屋外車庫 そして天井高のある海側に広がるリビングダイニング空間は 山から吹き下ろす風を海側へ、または海風を道路側へ通すような両面の木製引戸サッシにて、山側と海側を繋げることで、自然空間を繋げながら、開放的な住まいの空間を創っていた、外部と内部のつながり、だけでなく、共に生きる近隣コミュティともつながりやすいような気持ちの良い中間領域の構成は敷地のポテンシャルを十二分に生かし、生き生きとした生活を想像させる空間となっていると感じた。

公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会(JID) 理事長 丹羽浩之

最大限に自然を活かし敬意をもって家づくりをする、そんな受賞者の人柄を感じる。
海を愛で光と風の中に暮らし、山に守られる。風水的にも安定した場所に美しい平屋の家が建つ。人間の本来の暮らしが見えるようだ。
軒天とウッドデッキの間に広く開口する窓。インテリアとエクステリアの境目を探すことはもはや出来ない。自然の中に抱かれていると感じるのは、優れた色彩感覚と、水平ラインを強調する外観の美しさなど徹底したインテリアエレメントの選定の賜物である。
自然との深いキズナで設計された家は、地球と共に生きるこれからの人の暮らし方をご提示いただいているようだ。本コンテストのグランプリに相応しいと高い評価を得た作品である。

一般社団法人 日本フリーランスインテリアコーディネーター協会(JAFICA) 会長 江口惠津子